File No.003/ライダー

この話は大阪の学生時代に友人になった藤村くんの体験した話。彼と僕はクラスでも軍を抜くバイク好きで時間さえあれば単車の話しをしていたのだが、もう一つ彼には特殊な能力があった。「人間ではないもの」が見えるという。僕は残念ながら「見える」人ではないので確認はできないのだが、多分本当に見えているのだと思う。一度「なぁ、今度見えたら教えてーな!」と軽く言うと彼は笑いながら「伊藤ちゃんは多分わからへんと思うで、僕が見えたって言うても、どこどこ?って聞くやろ?」「・・・多分。」「ほなあかんわ!説明するんか?伊藤ちゃんに見えてないんやったら、その存在をどう説明したらええん?」「そ、そらそやな。。」「説明すんのって無意味やねん。別に信じてくれって思ってないし。同じように見えるんやったら意味あるけど。。」・・・・納得。。

そんな彼が体験した奇妙な話をご紹介します。

 

単車好きの彼は明石の地元の仲間11人と日帰りツーリングに出かけた。ツーリングと言っても彼らのツーリングは「バトル」。レーシングつなぎに身をつつみ、あえてワインディングの多いコースを選ぶ。今はそういう言い方をするのかどうかわからないが、「走り屋」というスタイルが彼らのそれだった。

天気は晴れ。絶好のツーリング日和のその朝、メンバーが全員揃った所で出発を開始した。

先頭集団はかなりベテランのライダー、そして列の中程には初心者を固め、最後尾にはまたベテランの藤村くんがついた。

数時間走っただろうか、まず最初の峠にさしかかった。この山も有名なバトルスポットである。峠にさしかかるとベテラングループは水を得た魚のようにそれぞれペースを上げコーナーを攻めはじめる。藤村君も最後尾から加速しその仲間に加わった。2ストオイルの焦げる甘い匂いが漂う。。さすがベテランライダー、果敢にコーナーを攻めながらも余裕の走りである。

そして峠の中盤にあるパーキングエリアにて初心者達の到着を待った。

「あ〜しんど。」藤村くんはそう言って缶ジュースのタブを開けた。それぞれはたばこを吸ったり、自分の愛車の調子を確認したりしてゆっくり休憩をとっている。。しばらくして2ストロークエンジンの音が近づいてきた。

「ぼちぼちやな。。」そしてすぐに初心者の一人がウィンカーを出しパーキングに進入。

「やっぱ、早いですねー!」

「ほらほや!16才の時から乗ってるんやぞ!、おう、他のヤツらは?」

「あ、、もう来ると思いますよ。」彼はそう言うってエンジンを止めたばこに火をつけると同時に2台目も合流。残りは1台。

 

それから何分くらい経っただろう、最後の初心者の到着がまだだ。。やけに遅い。。。事故でも起こしてなければよいが・・。藤村くんは心配になり最後尾の任務を果たせていない自分を悔やんだ。

 

パ〜〜〜〜〜ン!!

 

2ストロークエンジンの音がかすかに聞こえはじめた。あれや!藤村君はほっと安心しもう1本たばこに火をつけた。そして間もなくして、最後の一人がパーキングに到着。

みんなも休憩に退屈していたが、少しは休ませてやろうと、彼に促した。しかし、その初心者はヘルメットも外す様子もなくエンジンをかけたままずっと単車にまたがっているのだ。

遅れをとったので、気を遣っているのだろうか?そんな姿を見てか、先頭が「ほな、ぼちぼち出発しましょか!」と腰を上げた。みんなもヘルメットをかぶりバイクにまたがった。次は料金所を通過である。

藤村くんは先ほどの事があるので、先頭集団には加わらず後ろから2番目をキープして走行した。他の初心者は調子をつかんだのか先ほどよりも早いペースで、先頭グループになんとかついていこうと試みる。当然藤村君の前はあっという間に見えなくなっていた。

藤村くんはバックミラーでその遅れを取っている初心者を確認するのだが、

ある瞬間から気持ち悪いくらいに自分にぴったりとくっついているのである。

「・・上等や!あおってるつもりか!」

彼はスピードを上げると初心者を振りきろうと集中した。どうや?ついてこれへんやろ!調子に乗んなっちゅーねん!そう思いバックミラーを見ると、何と、まだ自分の後ろにピッタリとくっついているのである。アホな!こいつが僕について来れる訳ない!まだ免許取って1週間やぞ! 

(・・だ、誰や?コイツ誰や?)

藤村君はゾっとして無我夢中でスピードを上げた。しかし、どんなにスピードを上げても、彼のマフラーから吐き出される排気音が自分のすぐ後ろに聞こえてくる。そして道路には料金所を示す標識が現れた。藤村くんはスピードを落とすと、すでに彼の排気音が聞こえていないことに気が付いた。バックミラーに恐る恐る目をやる・・・。

(?! おらへん・・・・。)

 

そして料金所でみんなと合流。先頭が全員分立て替えて支払う。

「はい12人分」

係りの人がそういう。先頭が支払う。そしてまたバトルの開始である。藤村くんも先ほどの事があるので、もう彼にかまう事なくできれば関わりたくないと、先頭集団に紛れた。

 

しばらく走った所でパーキングである。ここでの休憩で最後である。先ほどと同じ状況で初心者の到着を待つ・・。たばこに火をつけると、となりにいた先頭がぼそっと話しかけてきた。。

「あんな藤村、、、今日って11人来てるんやんなぁ?」

「そや。出発する時は11人やった。数えたでな。」

「ほ、ほれがな、、さっきの料金所12人分払ってんねん。」

「は?」

「いや、、おっちゃんも数えたし、俺も数えてん。・・・確かに12人居たんや。。。」

 

マズイ!!!藤村くんは全てを理解した。

 

みんなが心配する中、最後の初心者を待った。。

 

パァ〜〜〜っ、パァっ

 

妙なリズムの排気音が近づいてくる。藤村くんは道路に出るとフラフラになって走っている最後の初心者を確認した。彼は到着と同時に倒れ込み、真っ青な顔で汗だくになっていた。。

それから彼の意識がはっきりしたのは3日後だった。彼はその日の出来事を何一つ覚えていないのだそうだ。

 

 

 

 

 

藤村君はそう一気に話してしまうとタバコに火をつけた。「伊藤ちゃん、そういうこともあるんよ。。」

 

「で、なんや?何か憑いとったんか?」

 

「さぁ、わからん。。そやけど、ものすごいバイクのテクニックがあるヤツやったわ。多分事故かなんかで亡くなっ

ても、まだあの道路を走ってるんとちゃうか。時々、誰かの身体を借りて・・・・・。」

 

 

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